第3回「さくら石狩DC見学ツアー」に行ってきたレポート

気付けば石狩から帰ってきて1週間も経ってしまったものの、まだなんとか記憶に残っているうちに「さくら石狩DC見学ツアー」に参加してきたレポートを。

今回のツアーの応募理由

「他所のデータセンターの中がどうなっているか見てみたい」というのがツアーに応募した最大の理由。 DC内・DC間ネットワーク(完全オンプレ)の面倒を見る仕事を今年の4月に始めてから約8ヶ月経った今、DC内での機器設置や配線をやったりDC調達の話を聞き齧ったりしたことで、DC絡みの諸々をまずは一通り眺めたような状態ではあった。が、それはあくまでこれまで見てきたDCに関してのことで、それらが一般的に見てどうなのかとか、他にどういう考え方・方法があるのか、といった点がここ最近の疑問だった。データセンターその他の低いレイヤのインフラ技術については中々知見が公開されないこともあって他者との比較が難しく、割と悶々としていたような状況だった。

そんな中で、はてブに上がってきていた募集の記事を見かけて応募したら運良く当選した、という次第。普通、DCの中を見せてくれる組織はなかなか無いので、今回当選して本当にラッキーだった。

全体を通しての感想

石狩DCの第一印象

石狩DCの建屋。「あれ、思ってたより小さい・・・?」というのが、バスでの到着時の最初の感想。実際はラック数(500ラック/棟)を考えれば妥当、というかむしろ少し大きめぐらいのサイズだが、何故か超広い土地に超デカい建物がドカンと建っている、みたいなものを勝手に想像してしまっていたので拍子抜けだった・・・。

(写真は特に断りが無い限りはてなさんにご提供。)

石狩DC全景 (後ろから)

後から冷静に考えてみると、地方のDCであればわざわざ建物を大きく作る必要が無いのだなぁ、と。都心のDCだと土地が狭いが故、縦に建物を広げるしかないので、最初にデカい建物をドカンと建てる方法になる。一方地方であれば横に広げることができるので、小さい単位で徐々に改善しつつ作ればよい、ということで納得。この「小さい単位で色々試しつつ改善する」というのは、今回の見学を通して随所で感じられた。1号棟->2号棟と順に見て廻ると、空調方式や電源まわりの構成であったり建物自体の設計であったりの改善がはっきりと分かるのは面白かった。さくらの方も仰っていたような気がするが、このあたりは自前DC+自前サービス向けだからこそできることで、借り物のDCであったりハウジング向けだったりすると中々難しそう。

DC内部の諸々

DC内部について。配線の処理とか機器の選定とか惹かれる箇所が多々あった。が、一番惹かれたのはサーバルーム入口の引き戸タイプの自動ドア!

自動ドア!段差無し!

DCで作業したことがある人であればご存知かと思うが、普通のサーバルームの入口は観音開きになっていて、かつ消化用ガスが漏れるのを防ぐために床部分が盛り上がっている。ここを荷物を載せた台車で乗り越えるのは割と神経を使う作業で、滑り落ち防止のベルトを掛け忘れて台車からサーバが飛び立ったりSFPが舞い落ちたりと、場合によっては割と笑えないことになる。この自動ドアは2号棟から導入したとのことだったが、現場の作業者の声がきちんとフィードバックされている感があって非常に好印象だった。これも一気にドカンと建てるのではなく小さく改善しつつ作ることの強みだと思う。

休憩スペース。過去に見てきたDCの休憩スペースはもっとこう、殺伐とした感じだったのでなんとなく落ち着かなかったものの、冷静に考えてこれが正常なような。

殺伐としていない休憩スペース

地理的な距離や立地

東京23区内から石狩DCまで約4時間弱?といったところ。もっと時間が掛かるかと思っていたが、意外と近かった。DCの近所には海底ケーブルの陸揚げ局があってそこから直にケーブル引けたり、新しく発電所が建つとのこと。DCの立地としてはかなり良さそう。

何の変哲も無い陸揚げ局

さくら田中社長のこと

噂には聞いていたが、さくらの田中社長が技術について嬉々として話す姿は衝撃的だった。仮想化環境でのIO云々の話をしたかと思えばサーバラックの熱処理の話をしてみたりと、ただひたすら凄い、の一言に尽きる。また、「DCがどうこうではなく、あくまで提供しているサービスの中身で勝負する。サービスに直結しないノウハウの部分は公開する。」といった旨の事を仰っていたのが非常に印象に残っている。特に前半部分については、インフラの特に低いレイヤの部分をやっているとつい忘れがちなように思う。

嬉々として喋る田中社長

その他諸々

新千歳に到着して早々、沿岸バスの洗礼を受ける。

車体に描かれていた3人の中ではこの子がよい

お昼ごはん。初日分、蓋を開けたところの写真も撮るつもりが開けた瞬間にそのことを忘れて食べ始めてしまったらしく、蓋付きの写真しか残っていなかった。もちろん非常に美味。

1日目のおひるごはん

流石に2日目ともなると冷静で、写真がちゃんと残っていた。

懇親会でLTしたらMackerel Tシャツを頂いた。はてなさんありがとうございます!(これだけ自分で撮影)

はてなさんありがとうございます

ツアー前日も1日中DCに籠って作業していた*1ら、そのダメージで初日夜は体力が残っておらず、懇親会2次会に参加しそびれた。逃した蟹は大きい。

おわりに

今回石狩DCツアーに参加して、当初の目的が果たせたのはもちろん、思っていた以上に色々なものを見たり聞いたりすることができた。見せてもらいっぱなしなのもアレなので、今後何らかの形で還元できればなぁ、といったことを考えている。

もし今後同じようなDC見学ツアーが開催されるのであれば、普段データセンターに関わっている人であっても、普段やっていることを客観的に振り返るという意味で参加すると良いと思う。普段DCに出入りしている人であっても、ベンダの保守やってるような人で無い限り複数の組織のサーバルームに出入りする機会は殆ど無いだろうし、そういう人こそ参加してみると意外な発見があるような気がする。 もちろん、データセンター見たことも入ったことも無い、という人も是非一度は見ておくべきだということは言うまでもない。

最後に、今回このような機会を作っていただいたさくらインターネットはてなの皆様、ご案内頂いた石狩開発さん、JTBさん、本当にありがとうございました!

*1:障害対応とも言う